奥村企画事務所
代表取締役

奥村眞吾

株式会社奥村企画事務所 代表取締役、奥村税務会計事務所 所長、OKUMURA HOLDING INC.(米国)代表。上場会社をはじめ医療法人、公益法人、海外法人など多数の企業の税務や相続税対策に携わり、海外にも拠点を置き海外税務も手がける。日本経済新聞社や NHK文化センター等の講師も務め、東京、大阪をはじめ国内各地、ハワイ、ロサンゼルスなど海外でも講演活動を行っている。『お金持ちに捨てられる日本』(PHP研究所)など著作物、連載を多数執筆。

超増税社会を生き抜く知恵

超増税社会を生き抜く知恵

青木仁志
青木

本日は、様々な組織や個人資産家の税務コンサルタントとしてご活躍され、弊社の監査役もご依頼している奥村眞吾先生をお迎えしました。今日は、信頼されるプロフェッショナルとなるための心がけや、日本の税制改革と企業経営への影響などについて伺っていきたいと思います。まずは、先生のこれまでの歩みについてお聞かせください。

青木仁志

奥村眞吾氏
奥村氏

私はもともとサラリーマン気質ではなく、「自分で何かやりたい」と思っていた人間でした。ただ資金がなかったので、資本なしに商売を始めるにはと考え、資格で始められる職業に思い至りました。医師、弁護士、会計士、建築士など、国家資格にもいろいろありますが、そのうち、「富裕層向けに商売をすることができるのは税理士だ」とそんな理由で目指そうと思ったのです。
最初のうちは、事務所も持てず、母親に電話番を頼むほどでした。税務の世界では叩き上げでしたから、資格を取ったその時からお客様がいる2代目や3代目の方を羨ましく感じることもありましたね。とにかく毎日、夜中まで働いたのを覚えています。いろいろな人の応援もあって、商売が軌道に乗るようになりました。

青木仁志
青木

そこからキャリアを積み上げていらっしゃったのですね。ご著書も大変な数にのぼると伺っています。

奥村眞吾氏
奥村氏

これまで執筆したのは約80冊です。去年から執筆ペースがまた加速していて、今年は消費税の本など8冊を出版させていただく予定です。

富裕層に選ばれ続ける心がけや態度

青木仁志
青木

奥村先生のクライアントには、日本有数の富裕層が多くいらっしゃるそうですね。

奥村眞吾氏
奥村氏

今ではプライバシーの侵害に当たるということで発表されなくなりましたが、何年か前まで新聞に掲載されていた高額所得番付では、相続税の申告額の全国上位10人のうち、必ず2人は私のクライアントでした。

青木仁志
青木

そうした方々は見る目も厳しいですし、選択肢も非常に広いはずです。その中で、奥村先生が選ばれ続けてきたのは、お人柄や能力あってのことだと思いますが、何か大切にされていたことがあるのでしょうか。

奥村眞吾氏

奥村眞吾氏
奥村氏

たとえば、車のセールスで、ベンツを扱っているセールスマンと、軽自動車を扱っているセールスマンがいたとします。良いセールスマンは自分のお客様から、他のお客様を紹介してもらえるわけですが、その時、ベンツに乗っているお客様は必ずベンツに乗るであろうお客様を紹介するのに対し、軽自動車に乗っているお客様は軽自動車に乗るであろう人を紹介します。つまり、お客様は自分と同じような仲間とお付き合いされているのです。私に富裕層のクライアントが多いのは、そのためです。
また、私は20代の頃から、ワイシャツにはカフスをして、どんなに暑くてもネクタイを締めることにしていました。富裕層の資産やお金の運用を任されたり、相続税対策をしたりする以上、締まらない格好はできません。いつも緊張感を持って臨まないといけない仕事だ、という信念を持っていましたね。

青木仁志
青木

なるほど。そのような想いを持って、お付き合いをされてきたのですね。逆に、先生からご覧になって、クライアントを選ばれる時に、どこを見るのでしょうか。成功する企業、成功する個人の共通項などを教えていただけますか。

奥村眞吾氏
奥村氏

第一に、成功されて立派な方ほど、人を区別せず、誰にでも丁寧な対応をとられる、ということです。年齢や名刺の肩書などではなく、自分の目で見て判断するのです。会社を訪問すると、「よくここまでお越しくださいました」と大御所でも駆け出しでも、同じ態度で出迎えてくださいます。親よりも年齢が上の方々と親しくさせていただく中で、そういったあり方の重要性を学ばせていただきました。<
第二に、お金儲けをしたくて、あるいは、お金儲けに走って、成功された方もいません。一度、松下幸之助さんに「どうしたら、そのように大きな会社が創れるのですか」と聞いたことがあるのですが、「私は大きな会社を創ろうと思ったことはない。気がついたら大きくなっていた」とおっしゃられました。これは重みのある言葉でしたね。実際に、大きな会社やお金儲けはそうなろうと目指すものではなく、結果なのだと思います。
また、世界的に有名なある資産家が、「自分のお金儲けは最後に考えなさい。自分の周りの人のお金儲けを一生懸命手伝ってあげなさい。周りの人がお金持ちになって、あなただけが放っておかれることは絶対にない。周りの人を犠牲にして、自分だけがお金を儲けようと思うから、失敗するのだ」と滔々と述べられていたことがあり、それも印象的でした。

青木仁志
青木

素晴らしいお話ですね。価値を提供すれば、相手からもそれにふさわしい価値をいただけるというのは、私たちが心がけなくてはならない、本質的なことですね。

増税社会の日本において、いかに生き抜くか

青木仁志
青木

最近のご著書である『お金持ちに捨てられる日本』(PHP研究所)はドキリとするタイトルです。日本は世界的に見て豊かな国と言われていますが、既に1086兆円の債務があり、アベノミクスで200兆円の新しい債務が増えるとも言われています。その中で私たちが豊かな人生を送るためには、人間性など無形の価値を高めることも大切ですが、やはり経済的な面での将来設計も必要になりますよね。

奥村眞吾氏
奥村氏

そうですね。所得が高いほうが、豊かに暮らすための選択肢が多くなるのは、たしかです。しかし、日本は税金面で問題があります。
いま、赤字国債の話をされましたが、日本には「その償還財源はお金持ちから取って当たり前だ」という考え方があります。その一つの現われとして、平成27年から所得税・住民税、そして相続税の最高税率が55%になります。お金を稼いでも、資産を相続しても、国に納める方が多くなる時代に突入していくのです。個人もそれに対して対策を考えていかないといけません。
事業相続の場合、アメリカの相続税には株式への控除などがありますが、日本では上場会社や非上場会社の株式や土地に対しても、普通の定期預金と同じように、相続税が課されます。その結果、創業者の長男ですら、発行済み株式の2%未満しか保有できないのです。オーナー家とは到底言えないレベルで、これでは会社の伝統、文化は守れません。アメリカで富裕層への課税を低くするのは、富裕層がその国の雇用と投資に対して貢献するからです。
日本では、節税のために国外に出ることは、儒教的な精神もあってか、格好悪いとする文化があります。しかし、それにも限度があり、国外に資産や資本が出ていく動きは加速しています。富裕層からお金を奪うことで、経営に100%専念できず、相続税対策に頭を悩ます、という事態は、国家的には大きな損失だと思いますね。

青木仁志
青木

そうですね。先日もニュースを見ていましたら、フランスの大金持ちがロシア国籍を取得したという話がありましたね。

奥村眞吾氏
奥村氏

フランスは、オランド大統領になって所得税の最高税率を75%にまで引き上げました。その瞬間に、富裕層が周辺国に逃げ出したんです。フランス語圏であるスイスのジュネーブでは、高級住宅地の地価が3倍に高騰したほどです。
これを見て、プーチン大統領は、ロシアでは12%以上はとらないという明確なメッセージを投げかけました。同じく、ロンドンの市長も新しい開発地区はフランス語圏にすると発表しました。富裕層が来ると、文化・教育レベルが高まり、国としてメリットがあるので、富裕層の争奪戦になっているのです。これに対して、日本はその逆を行っています。

青木仁志
青木

なんとも厳しい時代ですね。日本の国家経営は政治家に大きく委ねられている部分もあるので、できる限りお金が活かされる「経営」になるよう、期待していきたいと思います。
ところで、これから日本で会社経営をするときに財務面で意識しておくべきことについて、アドバイスをいただけますか。

奥村眞吾氏

奥村眞吾氏
奥村氏

日本の財務は、実は世界的には閉鎖的で、日本だけでしか通用しないところが多いのです。たとえば日本では、市場から直接お金を調達するよりも、銀行からお金を借りる間接金融が多いのですが、世界的には銀行に頼って成功した会社は非常に少ないと思います。
たとえば先日、ソフトバンクが米国企業を買収しましたが、実は同社の格付けは下げられてしまいました。これは、借入金を用いたからです。世界経済の目は、自力で稼ぎ出したお金でファイナンスをすることが第一だと考えているのです。無借金経営で大きくなった会社でも、後に銀行借入金に頼ったせいで、信用をなくしてしまったケースが少なくありません。銀行は、お金を持っているところには貸す一方で、お金がないとすぐに引き上げる傾向があります。ですから、自己資本の形成、特に資金繰りは自社の収入でやることが一番だと思いますね。
ある会社の社長さんは、受注がなくなっても、「うちには8兆円の貯金があるから、3年間は社員を守ることができる」とおっしゃっていました。しかも、そういう会社に限って、1円の桁まで節約するのです。このような会社はとても強いと思います。

青木仁志
青木

なるほど。ありがとうございます。本日お話を聞かせて頂き、お金を追うのではなく、どれだけ世のため人のために役立つ人間になるかが真の豊かさなのだと、改めて気付かされました。最後になりますが、『クラブニュース』の読者に対して、メッセージをいただけますでしょうか。

奥村眞吾氏
奥村氏

私が恵まれていたのは、職業柄、素晴らしい先人の方々と接することができ、多くを学ばせていただけたことです。その中で学んだ一番大きなものは、「感謝」という言葉かもしれません。たとえば、ある一部上場会社では、周年記念のセレモニーがあると、必ずあるご老人が来られるのです。その会社の会長に「どなたですか?」と伺ってみると、自分が商売を始めた時に大変お世話になった方で、その方が商品を買い上げてくれなかったら、手形が不渡りになって倒産していただろうとおっしゃるのです。だから、折々に感謝の気持ちを伝えたくて、遠くのお住まいまでお迎えに行くのだそうです。そうした「感謝」がエネルギーになっているということを、事あるごとに学ばせていただきました。
これはサラリーマンの方も同じで、ややもすれば、「自分が大きな受注をとった」、「自分がこれだけ貢献している」という態度になりやすいのですが、社長をはじめとして、周囲の人々への感謝を忘れてはいけない。そう思います。

青木仁志
青木

ありがとうございます。心の豊かさこそ大切だということは、先生の生き方を通じて日頃から感じておりましたが、本日いろいろとお話を伺う中で、改めて再確認できたように思います。これからも日本の富裕層の守護神として、ますますのご活躍を楽しみにしております。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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