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公益社団法人 日本青年会議所 2026年度 第75代会頭
加藤 大将氏
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アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
青木 仁志
幸福を起点とした「人財育成」が、強い組織と社会を創り出す
「明るい豊かな社会」の実現を目指し、ボランティアや行政改革などの社会課題解決に取り組む日本青年会議所(JC)。若きリーダーを育むこの組織の2026年度の舵取りを担うのが、第75代会頭の加藤大将氏だ。不確実性の高い現代において、真に求められるリーダーシップとは何か。そして、組織の永続性を決める「人財育成」の本質について、長年JCを支援し続けてきた青木仁志が迫った。
「憧れられるリーダー」であるか

加藤さん、まずは2026年度の日本青年会議所会頭へのご就任、誠におめでとうございます。いよいよ2万5000人の会員の頂点に立たれ、日本の未来を切り拓く大きな牽引役を担われることに、心から期待しております。本日は、組織を率いるリーダーとしてのあり方について深くお聞きしたいのですが、加藤会頭はこれからのリーダーに求められる最も重要な資質とは何だとお考えでしょうか。

ありがとうございます。私は、すべてのリーダーに対して、「あなたの姿は、憧れられる存在になっていますか?」ということを問いかけたいと思っています。組織というのは、人が人へと想いを受け継いでいくからこそ継続していくものです。しかし、その継承の根底にあるのは、リーダー自身の魅力です。ここで言う「憧れ」とは、決して役職や権力に対するものではありません。役職という飾りをすべて外して、一人の人間として後ろを振り返った時に、果たして誰かついてきているのか。そこがリーダーとしての真価が問われる部分です。

非常に鋭い問いかけですね。「何をするか」の前に、「どんな人間であるか」というあり方や人格そのものが問われているということですね。

おっしゃる通りです。虚飾で固められた「作られたリーダー像」には、誰もついていきませんし、人の心は動きません。「この人は人間として素晴らしいな」「こういう理念を持っている人になりたいな」という、ありのままの自分に憧れてもらえなければ、メンバーの「やる気のスイッチ」を入れることはできないのです。

同感です。人を動かす究極の力は、外側からの強制ではなく、内側から湧き上がる「憧れ」の思いです。実は、私は自分の息子に「勉強しなさい」と言ったことは一度もありません。しかし彼は今、経営者として歩み、日々勉強していますが、それはJCの先輩である中島土歴代会頭や池田祥護歴代会頭に目をかけていただき、彼らを心から尊敬しているからです。「先輩のようになりたい」という憧れがあるから、その素晴らしい「あり方」を自ら真似、学ぼうとする。「ありがとう」と言う心、「申し訳ありませんでした」と素直に謝れる心。そうした人間力を先輩の背中から学んでいるのです。リーダーが磨くべきは、スキル以上に、人が思わずついていきたくなるような「人格」そのものですね。

人が集まる「魅力」の正体は、幸福の追求にある

では、その「憧れ」や「人間的な魅力」は、いったいどこから生まれてくるのでしょうか。加藤会頭が2026年度の政策の「一丁目一番地」として掲げられている「幸福(しあわせ)」というキーワードに、そのヒントがあるように感じます。

はい。私は、真に人が集まってくるリーダーというのは、自らが「幸福」を追求し、満たされている人だと考えています。今、日本社会においても重要視されるようになったウェルビーイングですが、私は「幸せだからこそ、人が集まり、良いパフォーマンスが発揮できる」と考えています。順序が逆なのです。「成功したから幸せになる」のではありません。「幸せだから」、心に余裕が生まれ、他者に優しく接することができ、前向きに挑戦できる。その姿に周囲は魅力を感じ、共感し、自然と人が集まってくるのです。リーダーが眉間に皺を寄せて自己犠牲で働くのではなく、まず自らがウェルビーイングを体現し、メンバーの幸せを第一に考える。その「幸福のオーラ」こそが、最強の求心力になると確信しています。

その通りですね。不幸そうなリーダーに憧れる人はいません。私が38年間伝えてきた「選択理論心理学」でも、人の幸福は「5つの基本的欲求(生存、愛・所属、力、自由、楽しみ)」が満たされている状態だと定義しています。この欲求が満たされている時、人は創造性を発揮し、周囲に対しても貢献しようという意欲が湧いてきます。実際に私の会社では、社員の物心両面の幸福の追求を経営の目的に掲げてきました。物理的な待遇はもちろんですが、何よりも社員一人ひとりとの絆、人を大切にする文化、そして働きがいに満ちた環境づくりに特に力を入れてきました。働きがいのある会社ランキングでも10年以上ベストカンパニーに選んでいただいておりますが、社員一人ひとりの幸福度、充実度の高い組織に成長してきたと思います。その結果、社員は大体入社3年で給与の5倍の粗利を生み出せるようになります。現在、社員の平均年齢は29.2歳ですが、会社全体では売上81.9億円に対し経常利益28.9億円という高い生産性を実現しています。幸福を追求している組織は、経済的にも強い。「幸福」こそが、組織の成長と求心力の源泉なのです。
社会の最前線は「家庭」にある

青木社長のお話は、まさに私が伝えたいことの核心です。そして、その「幸福」や「人間性」が最も顕著に表れる場所こそが、「家庭」だと私は定義しています。私は「社会の最前線は家庭にある」と掲げさせていただきました。ビジネスやJC活動という「公」の場では、いくらでも立派な言葉を並べることができます。しかし、最も身近な組織である「家庭」で、どのような振る舞いをしているか。そこに、その人の本質的な人間性がすべて表れます。家庭を大切にせず、身近な人を不幸にしている人間が、社会や社員を幸せにできるはずがありません。家庭でのあり方は、そのままビジネスにおけるリーダーシップの質として表れるのです。

全く同感です。多くの人は、若い頃や創業期は「金・仕事・家族」の優先順位になりがちです。しかし、真に豊かで永続的な成功を収めている経営者を研究すると、例外なく「家族・仕事・金」の順序を大切にしています。これは、「仕事をサボって家族サービスをする」という意味ではありません。最も身近な他者である家族を大切にするという「誠実なあり方」を身につけている人は、社員や顧客に対しても同様に誠実に向き合えるということです。プライベートでの人間性は、ビジネスと地続きです。だからこそ、リーダーはマネジメント能力を駆使して、仕事と家庭の両方を成立させなければならないのです。

おっしゃる通りです。JCで学んだリーダーシップや防災・環境問題への取り組みを、「今こういうことを学んでいるから、家でも一緒にやってみよう」と家庭に持ち帰り、実践する。家庭という最小単位の社会を幸せにできるリーダーこそが、地域や国という大きな社会も変えていける。私はそう確信しています。

「真の心(しんのこころ)」で挑むリーダーが未来を拓く

最後に、これからの日本を担う全国の経営者やリーダーに向けて、メッセージをお願いします。

これからの時代に求められるのは、偽りや飾りのない「真の心」を持ったリーダーです。策を弄したり、自分を大きく見せようとしたりするのではなく、至誠を尽くして人と向き合うこと。プライベートでもビジネスでも、関わるすべての人の「幸せ」を本気で願い、行動できるかどうか。現状に安住することなく、挑戦し続ける姿勢が求められます。先の読めない時代だからこそ、恐れずに挑戦し続けることが大切ですが、その挑戦の根底には常に、嘘偽りのない「真の心」がなければなりません。私たち日本青年会議所は、そんな「真の心」を持ったリーダーを育み、輩出していく組織でありたい。そうしたリーダーが増えれば、必ず「希望溢れる幸せな日本」は実現できると信じています。

トップが変われば、組織のエネルギーは劇的に変わります。加藤会頭のその力強い「志」と、嘘のない「真の心」があれば、きっと日本中に希望の火が灯ると確信いたしました。「人づくりは組織づくり、組織づくりは国づくり」。この理念を共有するパートナーとして、私たちも全力で支援させていただきます。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。
加藤 大将(かとう だいすけ)
公益社団法人 日本青年会議所 2026年度 第75代会頭
株式会社心玉 代表取締役社長
公益社団法人 日本青年会議所 2026年度 第75代会頭。2013年に入会以降、JCI APDC(アジア太平洋開発協議会)への出向などを経て、国際的な視野と地域への深い愛着を併せ持つ。2026年度は「真の心が生み出す 幸せな国日本へ」を基本理念に掲げ、日本全国の会員を牽引する。







