• 公益社団法人 日本青年会議所 第71代会頭
    (2023年度直前会頭)

    中島土氏

  • 公益社団法人 日本青年会議所 第72代会頭
    麻生将豊氏
  •             アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
    青木仁志

3万人の青年経済人組織のトップに聞く 「人を導くリーダーシップ」の磨きかた

新型コロナウイルスによる世界的な経済危機に見舞われ、リーダーシップの重要さを実感する経営者や指導者の方も多かったのではないだろうか。企業をはじめ、さまざまな組織は、困難に直面したとき、誰かが先頭に立ち行き先を示さなければ、たちまち衰退してしまう。それはコロナ禍が落ち着いてきた昨今でもいえることだろう。日本青年会議所(JC)は、公益社団法人として3万人の会員を有し、より良い社会づくりのために、ボランティアや行政改革等の社会的課題の解決に積極的に取り組んでいる組織だ。この組織をまとめ、導いているのが、組織のトップを務める「会頭」である。今回は、第72代会頭の麻生将豊氏・第71代会頭の中島土氏に、いかにして3万人もの会員を率いているのか、そのリーダーシップの本質をアチーブメント株式会社 青木仁志が聞いた。

コロナ禍が教えてくれた「絆」の大切さ

青木

新型コロナウイルスの世界的な流行から3年が経ちました。そのなかで、数多くの企業が奮闘し、生き残りをかけて必死の経営を繰り広げてきたことと思います。なかでも、お二人のような立派なリーダーがいらっしゃる組織は、この逆境をチャンスに変え、成長の機会としてきたことでしょう。改めてこのコロナ禍を振り返ったときに、どのような期間だったのでしょうか。

麻生氏

JCという組織も、例外なく大きく揺れ動いた期間でした。私たちは、20歳から40歳の青年経済人のみが加入できる組織ですが、その60%以上の方は、35歳くらいに入会されて、5年以内に卒業されます。全国から会員が集まるイベントが毎年開催されるのですが、それも一定期間は全てオンラインでしたので、コロナ禍以降に入会された多くの方にとっては、リアルの会合を経験したことがない状態でした。最近になってようやくリアルでの会合が増え、よく知られるJCの姿を取り戻しつつあります。

中島氏

その動きを見ていると、いい意味での揺り戻しがあるように感じます。オンラインでしか繋がれないというのは、不都合な面もありましたが、いかんせん便利です。ですから、いまでもオンラインを重要視している企業は少なくありません。しかし、本当の意味で人と人とが深く繋がり、夢や志を語り、未来を創造するという意味では、やはりリアルを越えることはないと思います。JCはデジタルに明るい、若い方が多くいらっしゃいますが、あえてリアルで集まって語り合おうという動きが一気に戻ってきています。利便性や楽に流されるのではなく、あえて手間であっても直接会うのを大切にしているJCの文化なのだなと、改めて実感しました。

青木

私たちアチーブメントでも、コロナ禍でオンライン研修を新たに開発したりと、さまざまな仕組みを整えてきました。外出がなかなかできないなかでも学びを継続できたことで、ご受講生の皆様からは好評をいただきました。その一方で、直接会うというのはまた違う良さがありますね。

麻生氏

そうですね、私自身このJCの活動を通して人間関係の構築の仕方というものを真剣に学んできました。リーダーたるもの、人と話すなかで自分の魅力や考え方を伝える必要があるのを常々感じています。オンラインでももちろん出来るのですが、リアルの場だからこそ繋がれる絆があるのではないかと思います。

中島氏

思えば、私もかつて先輩に毎日のように直接指導をいただいて、JC運動を学ばせていただきました。初めて委員長という役割を持たせていただいたとき、最初はどうやったらいいのか全く分からず、困っていました。そんなとき、私の直属の上長が、車で40、50分かかる場所から毎日のように私の会社まで来てくださったのです。そして、一生懸命にJCとはなにか、事業計画はどのように作っていくのか、懇切丁寧に教えてくれました。当時はビジネスと全く関係がないのに、なぜここまで私のために、大切な時間を使って来てくれるのか疑問に思っていましたが、その先輩と顔と顔を合わせて、ご指導いただいた時間がなければ今の自分はいなかったのかもしれません。人と人が向き合い、直接コミュニケーションを取ることからしか始まらないものがあるのだなと思います。

再確認された「リーダーシップ」の重要性

青木

今の中島さんのお話はとても興味深いですね。私もこれまで多くの方にお会いしてきましたが、人がついていくリーダーというのは、やはり共通点があります。それは、人を思う利他的で寛大な「心」をもっているということです。私たちは、肩書や名声ではなく、その人がもつ価値観や人間力に心が動かされます。そうした価値観や人間力を磨くことを大切にし、活動を通して学んでいけるというのは、JCで活動するなかで大きな財産になるでしょう。近年、JCがリーダーシップの開発と成長の機会を重視すると再定義されましたが、どのような背景があったのでしょうか。

麻生氏

全世界のJCをつなぐJCI(国際青年会議所)がビジョンとミッションを改定して、「リーダーシップの開発と成長の強化」を掲げまして、それを日本も取り入れたという流れになります。もともと青年会議所は人間力を育てる団体であり、人間力の一つとしてリーダーシップを育てることを大事にしています。

中島氏

実際にJCは、手弁当での活動なので、お金では人は動いてくれません。3万人の組織全体がそうです。では、何が求められるかというと、その人らしいリーダーシップがあるかどうかだと私は思います。お金では動かない方々に、どうしたら気持ちよく、主体的に活動してもらえるのか、試行錯誤をしながらたくさんチャレンジしてきましたが、これが私の何よりの財産です。会社経営においても全く一緒だと感じます。



麻生氏

我々の団体が他の青年団体と違うのは、リーダーシップを育てることが目的であるという点です。他の青年団体は、国を良くする、地域を良くする、自分たちの会社を良くすることに主目的があり、リーダーシップを育てることがその手段となっています。それに対してJCでは、まずリーダーシップの開発と成長の機会があり、それを通じて開発されたリーダーシップをもとに、自分たちの地域や会社をより良くする活動に繋げていけるのです。

リーダーシップとは一体何か?

青木

ここで改めて伺いたいと思いますが、お二人にとってリーダーシップの本質は何だとお考えでしょうか。

麻生氏

ゴールセッティングなのではないかと思います。一日一日刻一刻と世間は変わっていきます。ときには、最初に自分が語ったこと、目指したものは正しかったのかを顧みて、ゴールが変わることもあります。そんなときに躊躇することなく、はっきりとゴールを指し示し、それを周囲に伝達できるのかどうかということが、とても大切なのではないかと思います。


青木

変化は進歩なりという言葉がありますが、目的に対して適切な手段を考え続け、提示し続けるということですね。中島さんはいかがでしょうか。

中島氏

私はリーダーシップの本質は愛だと考えています。つまり、決してその人の成長を諦めず、その人の全人格と向き合い、ともに成長していくということです。指導的立場にいる方であれば、対峙する人や状況がさまざまで、ときには「なんでこの人はこんなこと言うのだろう」と苦悩する場面もきっとあります。そんなとき、「この人は私の考えを理解できない人だ」と諦めるのは簡単です。でも、それでは巻き込める人がどんどん少なくなっていきます。大切なのはどんな状況であろうと、相手の中にある「成長していきたい」という思い、相手の全人格を信じる愛を持ち続けることだと感じています。

青木

私は長年、講師を務める『頂点への道』講座の中で、経営者に必要な能力として「リーダーシップ」の重要性をお伝えしてきましたが、お二人のお話から改めてその本質を確認できました。心の底から人を想い、未来を見据えて、目先の出来事に左右されることなく、「目的」に向けて判断をし続け、そして行動し続けること。これがまさにリーダーに求められる力ですね。

強みを知り志を持って未来に前進する


青木

違う角度からですが、いまはコロナ禍といったような複雑な国際情勢が続き、自国のことだけ考えていられない時代です。そのなかで、これからの若い指導者に求められるものは、どんなものだとお考えでしょうか。

麻生氏

日本人として日本という国の素晴らしさをきちんと知っておくことだと思います。ある新聞に出ていた記事なのですが、原木しいたけを乾燥させて粉末にしたものを、アメリカで大ヒットさせた人がいます。どうしようもない状況に会社が陥ったときに、海外に出してみたら大ヒットしたというのです。これは、日本では当たり前だったものに全然違った視点を与えることで、評価が変わった一例です。これは日本の中小企業にも当てはまると思っていまして、アイデアを出して、自分たちの商品を正当に評価していけば、まだまだ勝負できることはたくさんあります。そのためにも、歴史・伝統・文化・サービスを含めた日本の歴史を知ることが必要だと思います。

中島氏

私は志を持つことが大事だと思います。例えば、会社を経営するうえで、利益を出すという手段を目的にしてしまうと、儲かればいいという経営者が増え、日本全体の経済や我が国そのものが進歩していかないと思います。大切なのは、会社経営を通じて、社会に対してどう貢献したいのか、関わる人とどうなりたいのか、という経営者としての志です。そのためにも、まずは麻生会頭がおっしゃる様に己を知り、そのうえで志を立てていくことが大事だと思います。

青木

お二人の意見に100%賛同します。未来を背負う若者が、人を動かし、豊かさに導いていくリーダーシップの本質に触れ、リーダーシップという実力を身に付け、実際に自社や地域に還元していく善循環が日本の明日を切り拓いていきますね。私も若き日には、JCでたくさん学ばせていただきましたが、そうした場をぜひ活用してほしいですね。

麻生氏

ありがとうございます。3万人という規模の大きい組織であり、影響力があるからこそ、我々が本気で夢を語り、未来を切り拓いていくことで、日本社会に良い影響を与えられると信じています。政府とも程よい距離感を保ちながら、しっかりと協力関係を強化し、取り組んでいきたいと思います。

青木

中島さんも麻生さんも素晴らしい志をもって活動されている、日本の指導者だと感じました。そして、JCという団体が、手弁当で世のため人のために会員をまとめて組織をつくり動かしていく、そういった会社では得られないリーダーシップができる組織だと改めて感じました。ぜひ若いころから参加する人が増えて欲しいと思います。本日はありがとうございました。

公益社団法人 日本青年会議所 第72代会頭/麻生商事株式会社 代表取締役社長 麻生将豊
福岡県出身。大学在学中に仲間とITベンチャーを創業。さまざまなネット関連プロジェクトに参加する。2012年よりトヨタ自動車九州株式会社で生産管理職に従事。2015年、麻生商事株式会社へ入社。2023年1月1日より日本青年会議所の第72代会頭を務める。

公益社団法人 日本青年会議所 第71代会頭(2023年度直前会頭)/ジェイリース株式会社 代表取締役社長 中島土
大分県出身。中央大学を卒業後、大手信販会社などを経て、2012年にジェイリース株式会社へ入社。2011年に大分青年会議所へ入会し、総務委員会委員長や理事長、特別顧問などを歴任。2022年1月1日から同年12月31日まで日本青年会議所の第71代会頭を務める。

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