ChatWork株式会社
代表取締役

山本敏行

昭和54年3月21日、大阪府寝屋川市生まれ。1997年、中央大学商学部の夜間部へ入学。2000年、留学先のロサンゼルスにて、パソコンが得意だった弟と一緒に株式会社EC studio(現ChatWork株式会社)を起業。帰国後2004年、法人化したが、社員の流出が相次ぎ、2005年に1000人の経営者に会う中で、経営の本質は「社員満足」にあると気づく。その後「社員第一主義」を貫き、労働環境を良くするためにITを経営に徹底活用したことで、組織診断サーベイにおいて2年連続で『日本でいちばん社員満足度が高い会社』に認定される。中小企業を支援するためにITを活用した事業を多数展開。2012年、クラウド型ビジネスチャットツール「ChatWork」事業に一本化し、社名も変更。シリコンバレーに子会社ChatWorkIncを設立し、アメリカを起点に世界展開を図る。
ChatWorkサービスURL: http://www.chatwork.com/ja/

社員第一の“非常識”な経営術

社員第一の“非常識”な経営術

青木仁志
青木

本日は、2年連続で『日本でいちばん社員満足度が高い会社』に選ばれたChatWork株式会社 代表取締役の山本敏行氏にお越しいただきました。素晴らしい会社というものは規模ではなく、社員の幸福度で決まるものだ、と私は考えています。しかし、本当に社員が充実感を持って働いている企業は非常に少ないのも事実です。多くの経営者が社員を幸福にできる経営を目指していますので、本日は御社が高い社員満足度を維持されている秘訣や山本社長の考え方について、ぜひお話を伺いたいと思っています。本日はよろしくお願いいたします。

山本敏行氏
山本氏

よろしくお願いします。

青木仁志
青木

最初に、山本社長の経歴について簡単にお聞かせください。

山本敏行氏

山本敏行氏
山本氏

私はIT企業の経営者なのですが、実はITがとても苦手で、今でもワード、エクセルは使えないんです。そんな私がITの道に進むきっかけになったのは、高校時代にさかのぼります。体育会系で格闘技をしており、体力にモノを言わせてパソコンオタクの弟を練習台にしていたのですが、ある時父親から「この日本を作っているのは、オタクやぞ」と叱られまして(笑)。それをきっかけに、弟のやっていることに興味を持つようになり、コンピュータとインターネットの回線があれば、世界中の人とつながれる、ということを知ったんです。そのことにとても衝撃を受け、ITの世界に進もうと思い、起業したのですが、私自身にはスキルがないので、ITのできる人をマネジメントしていく形をとりました。 当社ではこれまで、中小企業の売上向上や業務効率向上の支援、コミュニケーションの活性化を、ITを通して実現することに力を入れてきました。ホームページを使って売上を出す方法や、少人数で五万社近いお客様に対応するための業務プロセスの改善など、自社で実践してうまくいったものをサービスとして提供しています。

青木仁志

青木仁志
青木

なるほど。自社で効果性が実証されているものを提供するというのは、当社とも似ていますね。誠実な姿勢でビジネスに取り組まれていますが、創業当初、次々と社員が離れていった時期もあったそうですね。どのようなきっかけで、経営のスタンスが変わったのですか。

山本敏行氏
山本氏

大学生の時に起業したため会社に勤めた経験がなく、会社を設立した2004年当時、経営のことは何も知りませんでした。また、みんなが自分と同じモチベーションを持ち、自分と同じように頑張れると思い込んでいたんです。しかし、「頭痛がする」「おなかが痛い」「会社に行けません」と言って離脱する人々が続出。最初は気合いの問題だと思っていましたが、そのうちに、どうやら自分に非がありそうだと考えるようになりました。
スポーツでもなんでもそうですが、我流でやると頭打ちになります。そこで、経営の基礎を学ぶために、1年間で1000人の経営者に会って話を聞くことにしたんです。経営者が集まる場に行って名刺交換し、30分くらい自分のビジョンを語り、それに対していろいろなアドバイスをいただきました。その時に気づいたのが、「うまくいっている会社の経営者の共通点は、社員を大切にしていて、会社のことを楽しそうに話す」ということでした。だとすれば、社員第一にしないと自分も生き残れないと思い、そこから頭を切り替えたんです。

青木仁志
青木

1年間に1000人ですか、凄いですね。

山本敏行氏 × 青木仁志

山本敏行氏
山本氏

365日間で1000人に会うのは無理だと思われるかもしれませんが、朝6時に倫理法人会、昼は経営者の研修会、夜はまた違う経営者の勉強会…と、毎日、複数の場に顔を出していました。睡眠時間は3時間という日が続きましたが、そうやって自分なりに経営のやり方を確立し、その翌年から一気に改善をかけていったんです。

社員を幸せにするために一番重要なのは社長の決意

青木仁志
青木

成功している経営者の話を聞く中で出てきた結論が、「社員第一」の経営だったのですね。社員満足を高めるための施策はたくさん試されたかと思うのですが、特に効果的だったものは何でしょうか。

山本敏行氏
山本氏

ランチトーク制度というものですね。社員の生の声を聞くためにはどうしたらよいかと考えていたのですが、一対一の面談ではあらかじめ考えてきたことを話すので、なかなか本音が出てきません。そこで、1か月に1度を目安に、上長と部下が互いに誘いあって1対1でランチに行き、気軽に雑談をしながら、相談にのったり意見を言ったりする機会をつくることにしました。それが、ランチトーク制度です。その時のランチ代は会社が支給しています。この時間でのやり取りが、社員の課題解決につながったり、吸い上げたアイデアから新たな施策も生まれています。ただし、こうした施策はあくまでも手段です。一番大切だと思っているのは、経営者が社員第一主義でいくという覚悟を持つことだと思います。

青木仁志
青木

なるほど。施策の前提として、経営者のマインドが大切なのですね。これまで社員第一主義を実践されてきて、何が経営のポイントだと考えていらっしゃいますか。

山本敏行氏
山本氏

そうですね。特に意識しているのが、「社員を首にしないこと」「感情的に怒らないこと」です。
たとえば、ある部署で成果を出せない社員がいたとしても、「どうしたらこの人は能力を発揮できるだろうか」と、とことん考えます。部署を変えたり、新設したりして、その人が輝ける方法を徹底的に探します。また、売上が増えると人を増やしたくなりますが、採用の際には、「この人は本当にうちにマッチするか」という点は慎重に見るようにしています。
感情的に怒らないのは、恐怖心からくる動機づけは長く続かないからです。しかも、怒られて怖いと思うと、怒られないような提案しか上がってこなくなります。だから、間違っている点については論理的に指摘はしますが、感情的に怒らないように心がけています。

青木仁志
青木

それは大切なことですね。ところで、社員満足度を上げる方策として、10連休が年4回、全社員にiPhoneを支給しているなど以外に、会社に電話がない、顧客に会わないなど、通常の会社であまり聞かないことも行われています。これはどのような意図があるのですか。

山本敏行氏
山本氏

一般的に、会社では理念やビジョン、社是、社訓などで自分たちが目指すことを定めます。そのすべてが大切で、全部を実行しなければならないとなると、どれも中途半端になり、残業したり無理したりするようになります。そこで、私たちは「しないこと」を先に決めました。当社の理念は「Make Happiness」で、それを追求するために「私たちはITを通して幸せを創り出します」と定めています。その実現のために「しないこと14カ条」を策定し、その中でインターネットを活用できないことはしないと決めたので、たとえば、電話営業をすれば売上アップは見込めますが、電話は使わないことにしています。

社員満足度日本一は結果であって目標ではない

青木仁志
青木

しないことを決めているのは、面白いですね。現在、御社の社員は30名ですよね。社員が増えるとさまざまな難しい問題が出てくるものですが、社員満足度を上げるために、専門的なアドバイスを受けられたのですか。

山本敏行氏
山本氏

社員満足度向上のためのコンサルティングや研修を受けたことはありません。実は、組織診断テストを受けたのも、潜在的な声を引き出そうと思ったからなんです。それで出た結果が日本で1番になったのですが、最初は30人の小さな会社だからだろうと言われました。しかし2年目にも1番になり、前年よりも改善が見られたので注目され、ワールド・ビジネス・サテライト、NHK、CNNなどに取り上げていただきました。私たちの働き方を知ってもらい、結果として、知名度の向上にもつながりました。

青木仁志

青木仁志
青木

実績は実在なり。社員を幸せにしたいと思うだけでなく、それを実行し、それが実績となって現れているのは素晴らしいですね。私自身も、社員満足が高い会社が最後に生き残ると思っています。なぜなら、社員が働きやすい会社は社会的にも評価が高まり、良い人材を集めやすくなるからです。その意味でいうと、社会的な注目度が上がっていたEC Studioから、最近、ChatWork株式会社へと社名を変えられたのは、どうしてですか

山本敏行氏

山本敏行氏
山本氏

これまでITのツールで業務効率・社員満足を高める方法を、いろいろなサービスを揃えてサポートしてきましたが、中小企業の場合、コストやITスキルの問題でなかなか全部を導入できないという声がありました。そこで、これまでのサービスの集大成としてチャットワークという新しいサービスを開発しました。社運をかけて、このサービス一本に絞り込み、10個以上あった他事業は取引先やグループ会社に、売上・ホームページ・顧客を含めて全て無償譲渡し、社名も思い切ってChatWork株式会社にしたんです。

青木仁志
青木

それはどのようなサービスなんですか。

山本敏行氏

山本敏行氏
山本氏

簡単に言うと、「社内のメールをやめましょう」というサービスです。メールは誤送信のリスク、迷惑メールによるメールの洪水など、ビジネス・コミュニケーションのツールとして、もはや限界がきています。チャットワークはそれらの問題を全て解決した次世代のコミュニケーションサービスです。社内メールをチャットワークに置き換えれば、組織の生産性が上がり、コミュニケーションが円滑になって社員のストレスが減り、社員満足度も高まります。試験導入しやすいように40人まで無料で使えるようにもなっているので、興味が湧いたら試していただけると嬉しいですね。

青木仁志
青木

生産性が上がって、社員が働きやすくなるなら言うことなしですね。今後のビジネス展開はどのように考えていらっしゃるんですか。

山本敏行氏
山本氏

日本だけでなく、全世界でシェアを取りにいこうと考えています。日本国内はKDDIさんと業務提携させていただいているのですが、全世界のプラットフォームにするべく、シリコンバレーに会社をつくりました。私自身も8月下旬にシリコンバレーに移住して、国産のビジネスツールを世界のプラットフォームにするべく社運をかけてチャレンジします。

青木仁志
青木

とてもチャレンジングで、面白いですね。社員が幸せということは、社長にとって一番幸せなことですが、簡単なことではありません。御社の取り組みを伺って、本当に見習うべき点が多いと感じました。今後もぜひ社員第一主義を貫きながら、世界を舞台にご活躍されることを楽しみにしています。本日は本当にありがとうございました。

山本敏行氏 × 青木仁志

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