柿谷カウンセリングセンター
所長

柿谷正期

1942年生まれ。中央大学大学院、米ウィートン大学大学院、トリニティ国際大学大学院、ジョージア州立大学大学院などで英文学、神学、コミュニケーション、カウンセリング心理学などを学び、4つの修士号を取得。1978年に柿谷カウンセリング・センターを開設。米国ウイリアム・グラッサー協会が認定した日本人初のインストラクターであり、1986年には、英語圏以外では初となる『リアリティ・セラピー集中講座』を主催するなど先駆的な取り組みを行い、現在も第一人者として活躍中。(元 立正大学心理学部教授)

選択理論、その価値と可能性

選択理論、その価値と可能性

青木仁志
青木

本日は選択理論心理学会会長であり、弊社を役員として側面から支え続けてくださっている柿谷正期氏をお迎えしました。立正大学心理学部の元教授として、カウンセリングセンターの所長として、豊かな学識と臨床経験をお持ちの柿谷氏に、選択理論の価値と、内在する可能性について伺っていきたいと思います。まずは先生と選択理論との出会いからお話しいただけますか。

青木仁志

柿谷正期氏
柿谷氏

私はもともと英文学を勉強していまして、中央大学大学院で文学修士を取得後、アメリカに渡ったんです。アメリカでは英文学だけでなく、神学、心理学などを10年かけて学び、1978年に帰国してからは、当時としては珍しかったカウンセリングセンターを開設しました。そして7年ほど経ったある日、現在アチーブメント社の特別顧問であるロン・カールトン氏から突然一本の電話がかかってきたんです。カールトン氏は、米国で選択理論心理学を学び、ウイリアム・グラッサー協会シニアインストラクターの資格を取得していらっしゃいました。日本への普及を考える中で、カウンセリングセンターを開いていた私に連絡してこられたんです。そこから、日本のカウンセリングの状況をお伝えしたり、勉強会に出席させていただくなどの交流が始まり、私自身も渡米してインストラクターの資格を取得。翌年の1986年には、日本で第1回目となる選択理論に関する講座を、カールトン氏とともに開催するに至りました。英語圏以外では初めて開催されたものになりましたね。

青木仁志
青木

一本の電話からすべてが始まったんですね。ところで、数々の学問を研究される中で、選択理論を普及しようと思われた決め手は何だったんですか?

柿谷正期氏
柿谷氏

実は米国留学からの帰国後すぐに、ジェイ・E・アダムズの翻訳をしていたんですが、アダムズは「グラッサーの弟子」と言われるほど、グラッサー博士と心理学的アプローチが似ていたんです。どちらも従来のカウンセリング手法や精神分析学に疑問を抱き、独自に研究を進めていましたからね。また私自身も、当時の主流であった、「相談者の感情」に焦点を合わせるカウンセリングに対して、「果たして本当の問題解決に繋がるのだろうか?」と疑問を感じていたところだったので、選択理論に出会った時、まったく違和感がなかったんです。感情ではなく、「本人の得たいもの」に素早く焦点を合わせていく選択理論心理学。これほどわかりやすく学びやすい手法がどうして日本に普及していないのだろうか。誰もやっていないのなら、自分が勉強してこれを日本に広めよう。そう心に決めたんです。

世界的に広がる、その理由

青木仁志
青木

柿谷先生のご活躍により、現在我が国でも選択理論がめざましい勢いで普及しています。その理由は何だとお考えですか?

柿谷正期氏
柿谷氏

まず挙げられるのは、選択理論が「行動のメカニズム」を〝脳〟という、文化や宗教に影響されない全人類に共通する切り口から解明している、ということです。選択理論では、人間には『5つの基本的欲求』という根源的な欲求があるとし、そのうち1つ以上の欲求を満たす人・物・信条などがイメージとして保存されている記憶の世界のことを『上質世界』と呼んでいます(図Ⅰ参照)。そして、人はこの『上質世界』にあるものを現実世界で求めて行動する、としているのです。例えば、喫茶店でコーヒーを頼んだ時に、自分がイメージしていたコーヒーよりも甘みが足りなかったとします。その時、人は、『上質世界』にある甘みのあるコーヒーに近づけるために、砂糖を入れるという行動を選択する、といったようにです。こういった脳の働きに基づいた選択理論のアプローチは、文化や宗教を超えた普遍的なものなのです。

図Ⅰ:5つの基本的欲求と上質世界

柿谷正期氏
柿谷氏

また、選択理論を学ぶことで、自分を効果的にコントロールできるようになるのですが、その結果、周囲の人間とも良好な人間関係を築けるようになっていきます。人間関係に関する悩みもまた、世界中どの国・どの組織にも存在するものであり、選択理論はそれを解決に導くのに効果的だからこそ、自ずと普及していったのでしょう。今では英語圏だけでなくイスラム圏やアジアなど、60カ国以上に普及しています。

青木仁志
青木

選択理論は、“脳”という観点から「行動のメカニズム」を解明しているという普遍性を持っているからこそ、これだけ普及している、ということですね。

柿谷正期氏

柿谷正期氏
柿谷氏

ちょっと具体的なエピソードをご紹介しますと、グラッサー博士はもともとランナーズハイにヒントを得て、選択理論の考え方を導き出されたそうです。マラソンで長時間走り続けている人は非常に苦しそうな顔をしているにも関わらず、走ることが楽しくてやめられない状態になっている。そこにはエンドルフィンという脳内物質が作用していると言われているのですが、博士はここに注目し、薬物やアルコールなどの外部要素に対する依存ではなく、ランナーズハイのような、自分自身の内部で生じるものに依存することに興味を抱き、脳の働きに関心を抱くようになったわけです。脳の機能を研究する中で人を動機づける「基本的欲求」の存在に行き着くとともに、不満足な人間関係が不幸感の原因にあると考えるようになって、選択理論を体系化していきました。
選択理論は、実際に驚くべき成果を生み出しています。ロサンゼルス近郊にCIWという女性対象の刑務所があります。そこでは選択理論が教育プログラムに組み込まれているのですが、通常60%と言われている再犯率が、選択理論を学んだ人たちは、なんと3年間で0%、5年間でも3%だったそうです。選択理論を学ぶことで、自分をコントロールする術を身につけたのでしょう。この例からも、選択理論が机上の空論ではなく、実効性のあるものだとお分かり頂けるのではないでしょうか。

青木仁志
青木

それはすごいですね。選択理論は、悩みを抱えている人々を実際に幸せにするからこそ普及しているのですね。

選択理論に内在する可能性

青木仁志
青木

では、今度は未来のお話をお伺いしたいのですが、これからの選択理論についてはどのような発展が可能だとお考えですか?

柿谷正期氏
柿谷氏

選択理論をベースにビジネスを展開している企業としては、アチーブメント社は世界でも最大規模だと思います。アチーブメント社の貢献もあり、日本では何十万人という単位で選択理論が普及しています。他国では心理学者や医療関係者などの専門機関でのみ広がっている選択理論が、日本では、経営者、会社員、さらには主婦の方々や学生にまで普及しているんです。このような草の根的な広がりを見せている地域は世界のどこにもありません。選択理論がカウンセリングの現場だけでなく、ビジネスを始めとするあらゆる領域に有効であることを証明していると言えます。いまや、「なぜ日本ではこれほど選択理論が普及しているのか、いったい何をしているのか?」と世界が注目している程です。この草の根的な流れを今後も促進するために、これまでの施策を発展的に継続することは勿論のこと、『ビジネス選択理論能力検定』などの新しい施策にもぜひ果敢に取り組んでほしいと思っています。また、医療、教育などあらゆる分野へと貢献する範囲を広げていってほしいですね。この流れは、もっともっと加速するはずですから。

青木仁志
青木

先生のご意見をもとに精一杯やらせていただいた結果で、本当に感謝の念に耐えません。また私自身も、学校教育の現場に選択理論を普及することには大きな可能性を感じています。

柿谷正期氏

柿谷正期氏
柿谷氏

未来の子ども達の教育を担う教育者に選択理論を学んでもらうことができれば、それは本当に素晴らしいことだと思います。メンタルヘルスというのは専門領域の人々だけが関わっていては実現できないものです。教育によって喫煙率が大幅に減少したように、教育がメンタルヘルスを担うことには大きな期待が持てます。実際に、各地の学校や施設で選択理論の知識をもったカウンセラーが評価されているんです。大学院と同等の教育機関をつくるなどして、選択理論を学んだ教員が現場に還元できるようになったらいいですね。

青木仁志
青木

なるほど。ありがとうございました。最後に読者に向けてメッセージをお願い致します。

柿谷正期氏
柿谷氏

キャリア論の用語に、「プランド・ハプンスタンス」という言葉があるんです。直訳すると「計画された偶発性」となるのですが、「キャリアは、偶発的に起こる出来事に最善を尽くし、対応を積み重ねることで形成される」という考え方です。私自身、初めから選択理論を学び、普及しようと思っていたわけではありません。カウンセリングや神学に携わる中で偶発的に選択理論に出会い、学んできた。それによって結果的に大きな貢献をさせて頂いているだけなんです。ですから、皆さんにもぜひ「プランド・ハプンスタンス」の考え方を大切にして頂きたいですね。選択理論も出会った時がチャンスです。学べる機会があれば学んでみよう、という姿勢で、一つひとつの出来事に積極的に取り組んで頂きたいですね。

青木仁志
青木

先生との出会いは、私にとってもアチーブメント社にとっても一生の宝と言えるものです。グラッサー博士がお亡くなりになった今、残りの人生、選択理論をさらに広めるために、全社をあげて邁進するつもりですので、どうぞこれからも宜しくお願い致します。本日はありがとうございました。

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