第3回・後編 「私たちでなくてはいけないことは、とことんやる」

様々な業界で活躍するトップリーダーの方をゲストにお招きし、どのようにトップにまで上り詰めたのかを、リアルな体験をもとに成功の技術を熱く語りつくすラジオ番組、青木仁志のトップリーダーと語る「成功の技術」。第3回放送には、株式会社ビジョンの代表取締役社長兼CEOの佐野健一さんが登場。佐野さんは、世界200以上の国と地域で使える「グローバルWiFi」を考案した凄腕の起業家です。放送の後半では、コロナの影響を受けた際に勇気をもらった言葉、決断力はどのように身についたのか伺いました。

「いよいよ僕ら情報通信がもう一回会社を支えるチャンスです」

徳島アナ
改めてデータで見ますと、「グローバルWiFi」で177億円の売上高、33億円の営業利益を生み出していたところ、新型コロナウイルスの影響で売上が6割減ってしまったということですね。

佐野氏

「グローバルWiFi」の売上はほぼ「0」です。情報通信の祖業があったので、そちらで売上を出していましたが、全体だと6割減となりました。

青木

6割減という大変な打撃を受けましたが、逆に社員が結束したと聞きました。それは、佐野さんが御旗を立ててブレなかったからです。

徳島アナ

そういうピンチのときは、社員の心が離れてしまうきっかけにもなり得ますよね。

青木

なり得ます。それが結束したのです。だからピンチのときにも社員が離れず離職者がほとんど出なかった訳ですね。

佐野氏

青木社長が仰ってくださったように、ブレなかったというのはあると思います。それと、私の背中を押してくれた出来事がありました。一つは非難の言葉を発すると思っていた機関投資家のみなさんが、応援してくださったことです。

青木

投資家のみなさんからの言葉には、勇気をもらいますよね。

佐野氏

はい。私たちもピンチをチャンスに変えてやろうという気になりました。もう一つは、コロナが流行した年の3月末くらいに、このまましがみついてもいけないので、いったん「グローバルWiFi」を解散して前進しようという意思決定をしたときの話です。

青木

その意思決定もすごいですね。コロナが流行して1、2か月で意思決定した訳ですよね。

佐野氏

そうです。この意思決定ができた背景には、大阪の情報通信の責任者の言葉がありました。それは、「社長大丈夫です。いよいよ僕ら情報通信がもう一回会社を支えるチャンスです。任せてください」という言葉です。この言葉がとても心強く、私の背中を押してくれました。これで私も、「よし分かった。頼むぞ」と意思決定することができました。

青木

素晴らしいですね。非常に痺れるお話です。「槍の名人は突く速さよりも、引く速さの方が早い」という言葉がありますが、まさに一流の経営者の決断力です。

自分たちができることに集中して立派にやり遂げる

徳島アナ
佐野さんのこの決断力はどうやって身に付いたものなのでしょうか。

青木

いかがでしょう佐野さん。ここはリスナーのみなさんも気になるところだと思います。

佐野氏

私が決断するうえで、いちばん大事にしているのは「大義」です。つまり、世に必要不可欠なものであり続けられるのかどうかということです。例えば、私たちの決断が鈍ったり、私たちが私利私欲的な意識を持ったりすることで、私たちのサービスは必要ないものに変わりえる訳です。なので、この「大義」は強く意識していることです。

青木

なるほど。その大義を貫きとおすために、何か佐野さんの中で基準としていることはありますか。

佐野氏

私が気を付けているのは、「やりたいこと」「やれること」「やらなきゃいけないこと」という3つの視点です。まず人よりもものすごい情熱を持ってやりたいと思っているのかどうか。そして、それをやってくれる仲間や資金や必要なものがあるのかどうか。さらに最後が最も大事なのですが、私たちである必要があるのかどうか。この3つが判断する決め手となっています。なので、私たちでなくてはいけないことは、とことんやろうと決めています。この3つの視点から議論と行動をしていくうちに、人やものに対しての思いや大義そのものが芽生えてきました

青木

トップリーダーが持っている能力の共通項に、できることとできないことを明確に区分できる力があります。できないことに集中するのではなく、できることに集中し、それも誰もできないほど立派にやり遂げていくことが大切だということですね。佐野さんのお話を聞いて、まさに東証一部の企業に育てていく経営力を感じました。

 

前編・「苦難を乗り越えて、結果的に会社が強くなっていった」はこちら▶

佐野 健一(さの けんいち)
株式会社ビジョン代表取締役社長兼CEO
鹿児島県出身。1990年、通信会社に入社しトップ営業マンになる。1995年に株式会社ビジョンを設立。2012年より海外用モバイルWi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」を200以上の国と地域に提供。2015年12月東証マザーズ上場、2016年12月東証一部へ市場変更。

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