道を究める

時代が変わっても、
スポーツ、武道、学業、芸術など、どの分野においても、
そのことに全エネルギーを集中した人がその道を究めている。

若い頃、私が働いていたブリタニカで、
”ブリタニカの天皇”と呼ばれた陣内友幸さんに伺ったお話を、
私は今でも忘れられないでいる。

陣内さんの奥様である、芸術家の陣内一土さんが、
陶芸家の加藤唐九郎先生に、
書を見てもらった際に、加藤先生は、
「ものにならんな。」
と、ひと言言って書を返されたそうだ。

一土さんも一日何時間も練習していたので、
「どこがよくないのか、お教えいただけますか。」
ともう一度聞いたところ、
「だから、ものにならんもんはものにならんと言っているのだ。」
と突き放されたそうだ。

改善のしようのないフィードバックに、
当然のことながら、一土さんは落ち込んでしまったそうだ。
そこで同席されていたご主人の陣内さんが、
「できたら、もう少し具体的に、
どういうところがよくないのか、ご助言頂けないでしょうか。」
と加藤先生に伺われたそうだ。

すると、加藤先生は、
「君は平安朝時代の女官の恋文を読んだことがあるか?」
と一土さんに聞かれた。
「見たことはもちろんございます。」
「君の書は所詮付け焼刃だ。
 平安朝時代にはペンなどはない。
 君はペンを使いながら書を書いているだろう。
 その程度でものになるもならないもないだろう。
 取り組みが根本からおかしいんだ。」
とおっしゃったそうだ。

そこで陣内一土さんはその日からペンをやめ、
すべて筆を使い、ペンの感覚を忘れることで、
書の道を拓かれたそうだ。

今は世界的な芸術家となられた陣内一土先生の若いころのお話だが、
ご主人である陣内友幸社長が社内研修の際に教えてくれた話である。

この話を私は聞き、
「私は早く社会に出たし、特に才能があるわけでもないけど、
 健全なこだわりと努力だけは誰にも負けないようにしよう
と思ったことを今でもよく覚えている。

成功に必要なものは、健全なこだわりと、本気と目的目標に対しての効果的な行動の選択だと私は考えている。

日々、”何にこだわるか”によって、人生の質が変わってくる。
今日も健全な目的目標へのこだわりを持って過ごしたいと思う。

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